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(※2004年の特定外来生物被害防止基本方針案パブコメの際に作成したものです)

パブコメについて本音で語ろう

ゼゼラ「特定外来生物被害防止基本方針案パブコメを記念して、パブコメ制度の微妙なところについて、本音で語ってみようという企画です」

カワウ「うすうす思っているけど、なかなか言いにくいことも、この際言ってしまいましょう」


○意見が採用されるか否か

ゼゼラ「パブコメは、ネタの提供だと考えるのが良いと思います。いかに正論であっても、行政が進もうとしている全体的な方向の中では採用されない場合もあるし、逆に、行政が進む方向を修正する時に、出ていた意見にうまく乗るということをする場合もあると」

カワウ「で、採用されればもちろん大成功だし、採用されない場合でも、『こんな正論なのになぜ無視するのか』とぶち上げることができる」

ゼゼラ「だから、出しておいて損はないと思う。ただ、後で触れるけど、いかにも正論である意見を出すことが重要」

カワウ「その時に採用されない意見でも、公に示してアピールすることで影響を及ぼすというのは、環境保護運動とかでも良くあるパターンだね」


○方向は裏で既に決まっている?

ゼゼラ「これは、既に決まっていて動かせない部分もあると考えるのが正しいと思います。今回の基本方針で言えば、2月に行われた法律自体についての省庁間協議(法律の所管する環境省・農水省とそれ以外の省庁との協議)でも、基本方針について方向付けがされている部分があるし、基本方針自体についての省庁間協議もこの時期に行われているはずです。そこで決まった省庁同士の約束に関する部分は、覆すのはかなり困難でしょう」

カワウ「でも、表向きは『パブコメで意見を聴いて取り入れます』という雰囲気にしておいて、見えにくいところで実際にはいろいろ決まっているというのはどうなのかな」

ゼゼラ「今の時点では、そういうものなのだと理解するしかないんじゃないかな。これからどんどん変わっていく部分だと思うけどね」

カワウ「そういう世界に縁がない一般の人の感覚では、不信感に繋がるのではないかと思ってしまうなぁ」


○意見の数はどう影響するか

ゼゼラ「理屈の上では、影響しない。と言うか、影響してはいけない。数勝負になったら、選挙と同様に、組織力のある団体の力勝負になってしまうので、制度として無意味になる」

カワウ「でもさあ、法制審議会でやった人名用漢字のパブコメなんか、『意見が何件』とか言ってるよ。で、それを削除するって。でも、意見が多いのって、新聞とかで『この字はいかがなものか』って取り上げられたのを見た人が、それに影響されて意見を送っているだけなのではないかと」

ゼゼラ「まあ、そうなんだよね。数えられる以上、数えてしまって、それに影響されるのが現実。中環審・外来生物対策小委員会委員長の岩槻邦男氏も、『新生物多様性国家戦略の案のパブコメで、千数百ぐらいブラックバスに関する批判的なコメントがあったが、この法律をつくるときの中環審答申案パブコメでは、見るべき数がなかった』なんて言ってしまうという現実。同じ意見でも、1件と1000件では、受け取られ方は違ってしまう」

カワウ「一定の数はあったほうが良いと」


○意見の書き方

ゼゼラ「パブコメに限った話ではないのですが、同じ結論に至る意見でも、違う理由付けがあり得ます。例えば...」

[A]「私は、外来生物であるブラックバスを釣ることを趣味としている。特定外来生物の選定では、こうした価値も考慮してほしい」
[B]「既に広く定着している外来生物を駆除するためには、莫大な費用がかかる。国・地方とも、財政が非常に厳しい状態にある中で、新たな支出には極めて抑制的であるべきである。既に定着した外来生物は、特定外来生物に指定して利用を厳しく制限し、駆除に莫大な費用をつぎ込むよりも、むしろ有効利用を促進した方が公益に資するのではないか」

ゼゼラ「...という2つの意見があり得て、これはどちらもブラックバスを特定外来生物にしない方向の意見になるわけです。で、客観的に見てどちらの意見がより広く受け入れられる正論かと言うと、どう考えたって[B]なわけです。だから、心の中にあるのは[A]の意見で、[B]の意見を実際には持っていなくても、[B]の意見を出したほうが、結果的に[A]の意見が実現されやすくなるはず」

カワウ「でも、バス釣り関係者が言っているのであれば、誰が言っているかという属性で判断されるんじゃないの?」

ゼゼラ「パブコメは、だれがどの意見を言ったかということは公表されないし、個人レベルの意見になると、その人がどんな属性を持つのかは、そもそも調べようがない。だから、駆除に無駄な金を使うなという意見が来たという事実だけが残って、しかもその件数がそれなりだったとすると、影響を及ぼしやすい」

カワウ「それって制度の欠陥と言うか、制度の悪用と言うか、そうじゃないの?」

ゼゼラ「確かにそんな気もしなくもない。もっとも今回に限っては、ここでこんなことを書いているからネタバレだけど。どんな立場であっても、裏でこっそりそういう作戦を考えて意見を送ることは可能で、それを繰り返していくと、パブコメ制度の趣旨が失われて、崩壊する可能性も無きにしも非ず。ただ、正論は採用して、そうでないものは採用しないということを行う限りでは、変なところに行き着くことはないと思うけど」

カワウ「結論としては、実際には自分の意見ではない意見を出すことで、自分を有利に導こうということか? なんだかなぁ」

ゼゼラ「実際にそうするかどうかはともかくとして、そういう現実はあるということかな」

(2004.7.24)

○実践編

ゼゼラ「だいたい次のような感じで、どこが既に確定している部分で、これから決まる重要ポイントはどこかということを切り分けて考えると、良いのではないかと思います」

カワウ「法律本体で確定していない部分に集中するのが賢いわけだね。そこで押すか押されるかと」


法律本体によって確定していること

・特定外来生物に指定されると、輸入すること、飼うこと、野外に放つことが全国で禁止される。(法4条、7条、9条)
・例外は、基準に適合する施設を用意して許可を受けた場合で、その目的は学術研究等に限られる。(法5条)
・規制は全国一律で、地域的に例外を設ける規定はない。
・部分的な規制、例えば飼うことはできるが野外に放つことはできないというような規制はできず、特定外来生物となった場合の規制基準は一律となる。
・未判定外来生物の指定は、あくまで一時的なもので、輸入の届出があれば特定外来生物かどうか判定をすることになる。(法21条、22条)


ほぼ確定していること

・特定外来生物を飼うことは、ペット目的の場合は許可されない。
・既に野外に存在する特定外来生物を捕獲または採取した直後に放つ行為は禁止されない。


基本方針に左右される重要ポイント

・特定外来生物選定の際の被害判定基準。法律本体では具体的に定められておらず、基本方針での記述が大きく影響する。例えば、単に「被害」があれば対象となるのか、それとも「重大な被害」がなければ対象とならないのかといった細かい部分が大きな意味を持つ。(基本方針案3ページ)

・特定外来生物選定の際の考慮事項。被害というマイナス部分と同時に、利用価値などのプラス部分、既に広く定着しているものに対策を講じる場合のコストなど、他に考慮すべき事項がある場合、その総合的な評価は基本方針での記述が大きく影響する。案文では、「原則として生態系等に係る被害の防止を第一義」としつつ、「特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮」とされている。(基本方針案4ページ)

・特定外来生物選定における意見聴取。法律本体では、「生物の性質に関し専門の学識経験を有する者の意見を聴かなければならない」(法2条3項)となっており、広範な意見聴取を義務付けているように読むことができるが、基本方針案では「生態学、農学、林学、水産学等」と自然科学系に限定され、生物を利用する関係者からの意見聴取は「検討する」と低い位置に置かれている。(基本方針案4ページ)

・特定外来生物を飼う許可の対象。「学術研究の目的その他主務省令で定める目的」(法5条1項)の「その他主務省令で定める目的」が何になるか。案文では、「展示や教育、許可規制を行うことで遺棄や逸出等に対して十分な抑止力が働く生業など」を許可対象とし、「愛玩飼養等」を対象としないことになっている。(基本方針案5ページ)

・防除の実施。既に広く定着した特定外来生物を防除する場合の費用対効果や実現可能性の検討、防除実施に際する協議や検討への利害関係者の参加などについての記述がどのようになるか。(基本方針案9ページ)

(2004.7.28)

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